執着王子と聖なる姫
呆れてため息をつきかけた時、一度収まりかけていたざわつきが再び教室に戻った。


「マナ!」


本日二度目のジャストだ。タイミング探知機でも取り付けているのだろうか。いや、コイツに限ってそれはないか。

そんなことを思いながら、漸く解放された手を軽く上げた。

「おう。どした?」
「大変です!」
「空気読めるか?俺も今大変だ」

ドンッと俺の机に弁当箱を置いて、セナは彼を押し退けた。何故コイツは弁当箱を持って来たのか。それは取り敢えず訊かない方向で行こう。


「あのっ…あのですね!」
「うん。取り敢えず落ち着け。飲むか?」

パックのジュースを差し出すと、勢い良くそれが吸われる。それを途中で奪い取ったのは、言わずもがな目の前で不機嫌そうに眉を寄せる彼だ。

「何するんですか」
「俺を無視すんな」
「居たんですね」
「朝からな」

ジュースを取り返そうと必死に手を伸ばしてはいるのだけれど、残念ながら相手は長身だ。チビのセナには届くはずもなく、むぅっと頬を膨らせて新見を睨み上げた。

うん。
残念なことにいまいち迫力に欠けているけれど。

「返してください。それはマナのです」
「お前、こいつとどうゆう関係?」
「お前ではありません。セナです。それに、教える義務はありません」

ピシャリと言い放ち、セナは手近な椅子を引き寄せた。なるほど。その手があるか。

「人様の物を奪ってはいけません」

ピョンと椅子から飛び降り、奪い返したジュースを再び吸うセナ。マイペースもここまでくれば立派な長所だと思う。
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