執着王子と聖なる姫
「セナ?」
「大変です!マナ!」
「いや、俺も今大変なんだけど…それを聞く気はねーか?」
「後で聞くので、先にセナの話を聞いてください」

あぁ、そうですか。

パカリと開かれた携帯が押し付けられ、「大変」の理由が表示されたその画面を流し読む。

「で?」
「大変でしょう?」
「どこが?」

せっかくだからセナの両親も誘うことにしたから、夕食は二人で済ませてくれとのことだ。

同じ内容のメールが届いた俺としては、これのどこに「大変」要素が含まれているのかがいまいちわからない。現に俺は「OK」と簡単に了承した。

「大変です!一大事ですよ!」
「だから何がだよ」
「マナとセナは夕飯抜きです!」
「どうしてそうなる。どこにそんな文章があった」
「え?」
「え?じゃねーよ」

パシンと頭を叩くと、痛い視線が刺さった。

「セナに触るな」
「部外者はお静かに!寧ろこの場から去ってください。どうぞ」

セナの堂々たる物言いに、若干クラスの奴らが引いているのは気のせいだろうか。益々面倒なことになりそうだ…と、座り直してセナの弁当袋を漁る。

「セナ、これ借りるよ?」
「え?あぁ、どうぞ。お箸も忘れましたか?マナはうっかりさんですね」
「箸は忘れたんじゃなくて落ちて汚れたんですー」
「なら洗いに行けば良いのでは?」
「それをさせてくれなかったんですよ、そこの彼が」

同じように前の席に腰掛けたセナが、未だ立ったままの新見を睨み上げた。

「どうして意地悪するんですか?…って言っても答えてくれないのはわかってます。時間の無駄でした」
「何?知り合いなわけ?お前とそこの彼」
「はい。ご近所さんです」
「へぇ」

所謂「幼なじみ」というやつだろうか?そんなことを思いながらオムレツをフォークに差し、ふとそれに釘付けになっている視線に気付く。
< 48 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop