執着王子と聖なる姫

 父の策略

人と一定の距離を保つ術を知っている俺には、妹と違い友達が多かった。

男女問わずある程度の付き合いで留め、それ以上は踏み込まないし踏み込ませない。それが楽だったし、俺には妹が傍に居ればそれで良かった。妹だけが俺の依存対象であり、他を望むことは決してない。

そう思っていた。


「What's!?」 「何だって!?」


リビングでアクションゲームをしていた男二人の声が重なる。

せっかくなので、龍二も誘って三人で夕食を食べた。セナは始終不満げにしていたけれど、それでも何とか無事に夕食を済ませ、俺達は食後のひと時を楽しんでいる最中だった。

「おい、メーシー。マリー馬鹿もそこまでくるとどうかと思うぞ」

呆れてため息をつく俺に、父はいつものようにふふっと短く笑って答える。戻ってきた両親の傍らに妹の姿が無い理由を問うと、母がエヘンと無い胸を張ってこう言ったのだ。


「今日からvacationが終わるまでレイとセナを交換することにしたの」


母が唐突なのはいつものことだ。

けれど、いつもならば驚きの声を共に発しているはずの父が、今日はどうしたことかにこにこと笑いながら頷いている。そして俺の台詞に戻るというわけだ。
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