執着王子と聖なる姫
愛妻家を否定するつもりは無い。両親が不仲よりも良い。
けれど、ここまで言いなりになるのはどうかと思う。
娘は物ではない。交換するだなんておかしな話だ。もう少し子供達のことを考えてくれても良いのではないだろうか。
この人のことだから、俺とレイが互いに依存し合っていることは先刻承知の上だろうに。
「パパ、も賛成したんだ。その方が君らにとっては良いんじゃないかと思って」
「レイは…アイツは何て言ってんだよ」
「レイは喜んでたわよ。晴を気に入ったみたい。はい、これセナの下着とクマね。服はレイのを着ればいいわ」
旅行鞄を椅子に置き、母はゆるりとセナの頭を撫でた。
「レイちゃんの服を着て良いんですか?」
「ええ、いいわよ。趣味に合わないかもしれないけど、レイもたくさん可愛い服持ってるわ」
「それは楽しみですね」
「え、お前それでいいわけ?」
あまりにもあっさりと受け入れたセナに、思わずソファから身を乗り出してツッコんだ。それと同時に、TVからキャラクターの絶叫が聞こえた。あ…ゲームオーバーだ。
それもそうだろう。
必死にクリアを目指して画面の中の敵と戦っていた男二人は、既にコントローラーを手放し放心状態なのだから。
「死んじゃいましたよ?武将さん」
「いや、今それどころじゃねーから」
相変わらずのマイペースぶりに、若干頭痛がする。それはどうやら龍二も感じていたらしく、ゆるゆると頭を振り、大きなため息をついていた。
「やらないんだったらセナに貸してください。セナがマナの代わりにぶった斬ってやります」
「サラッと恐ろしいこと言うねー、お前は」
「貸してください。さぁ」
「どーぞ。龍二ちょっと頼むわ」
「おぉ」
コントローラーの代わりに、ダイニングテーブルのベンチを譲ってもらう。腰掛けると、ちょうどビールを運んで来た父が微笑んだ。
「マナも飲む?」
「未成年に酒勧める親もどうかと思うぞ」
「そう?じゃあ君らにはジュースでも入れてあげようかな」
「是非そうしてくれ」
キッチンに向かう背中を視線で追いながら、ふぅっと大きく息を吐く。
向かい合った母は、今朝と同じく上機嫌だ。
けれど、ここまで言いなりになるのはどうかと思う。
娘は物ではない。交換するだなんておかしな話だ。もう少し子供達のことを考えてくれても良いのではないだろうか。
この人のことだから、俺とレイが互いに依存し合っていることは先刻承知の上だろうに。
「パパ、も賛成したんだ。その方が君らにとっては良いんじゃないかと思って」
「レイは…アイツは何て言ってんだよ」
「レイは喜んでたわよ。晴を気に入ったみたい。はい、これセナの下着とクマね。服はレイのを着ればいいわ」
旅行鞄を椅子に置き、母はゆるりとセナの頭を撫でた。
「レイちゃんの服を着て良いんですか?」
「ええ、いいわよ。趣味に合わないかもしれないけど、レイもたくさん可愛い服持ってるわ」
「それは楽しみですね」
「え、お前それでいいわけ?」
あまりにもあっさりと受け入れたセナに、思わずソファから身を乗り出してツッコんだ。それと同時に、TVからキャラクターの絶叫が聞こえた。あ…ゲームオーバーだ。
それもそうだろう。
必死にクリアを目指して画面の中の敵と戦っていた男二人は、既にコントローラーを手放し放心状態なのだから。
「死んじゃいましたよ?武将さん」
「いや、今それどころじゃねーから」
相変わらずのマイペースぶりに、若干頭痛がする。それはどうやら龍二も感じていたらしく、ゆるゆると頭を振り、大きなため息をついていた。
「やらないんだったらセナに貸してください。セナがマナの代わりにぶった斬ってやります」
「サラッと恐ろしいこと言うねー、お前は」
「貸してください。さぁ」
「どーぞ。龍二ちょっと頼むわ」
「おぉ」
コントローラーの代わりに、ダイニングテーブルのベンチを譲ってもらう。腰掛けると、ちょうどビールを運んで来た父が微笑んだ。
「マナも飲む?」
「未成年に酒勧める親もどうかと思うぞ」
「そう?じゃあ君らにはジュースでも入れてあげようかな」
「是非そうしてくれ」
キッチンに向かう背中を視線で追いながら、ふぅっと大きく息を吐く。
向かい合った母は、今朝と同じく上機嫌だ。