執着王子と聖なる姫
それもどうかと思うけれど、止める人間がいないのだからどうしようもない。いつもはギャーギャーと煩い母も、ああなった父には決して意見しなかった。

「紹介する。クラスメイトの龍二。龍二、これうちの両親。ちょっと痛いけど、まぁ悪い人達じゃねーわ。ホントは妹もいんだけど、今はちょっと…」
「初めまして。新見龍二です」
「初めまして。愛斗の父です」
「Nice to meet you.」

差し出された手をおずおずと握り、龍二は不思議そうに首を傾げた。

「どした?」
「お前…ハーフじゃないよな?」
「あぁ。どっちも日本人だからな」
「かーちゃん…見たことあんぞ、俺」
「は?どこで」
「うちの家に写真が飾ってある。かーちゃんだって」
「はっ!?」

俺が双子だという話は聞いたことがない。いや、ツッコミ所はそこでは無い気がする。

「かーちゃんって…龍二の?」
「おぉ。俺は会ったことないから、写真でしか知らないけどな。アメリカ人らしいわ」
「でもお前…ハーフっぽくねーよ?」
「俺にもよくわかんないんだよ」

うぅんと頭を悩ませる俺達二人を眺めていた母が、ふと思い立ったように「あっ!」と声を上げた。

「What's?」
「ねぇ、もしかしてお父さんってヒカル?」
「あぁ、はい。そうっすけど」
「麻理子、知ってるの?」
「JAGの元モデルよ。ほら!メーシーも知ってるでしょ?」

知っている顔だ。
けれど、どうやら父は話したくはないらしい。苦笑いをしながら「どうだったかな?」と首を捻っている。

「知ってるんすか?」
「知ってるわ。でも、残念ながらアタシはあんたのmamaじゃないわよ。アタシのhusbandはメーシーだけだし、生んだchildはマナとレイの二人だけよ」
「まぁ…そうでしょうね」
「dadyは今どこ?久しぶりに会いたいわ」
「いや…」

口を噤んだ龍二の代わりに、言葉通り敵をぶった斬るセナが口を挟んだ。素晴らしい。ナイスタイミングだ。
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