執着王子と聖なる姫
いくらハルさんを気に入ったとは言え、一緒にベッドに入ることは不可能だろう。一人で眠るとなれば、甘えたの妹はきっと泣いてしまう。泣いて、俺の名を呼ぶ。

それを考えただけで、胸が張り裂けそうに痛む。

「やっぱ俺…レイ迎えに行ってくる」

居ても立ってもいられず駆け出そうとしたが、ギュッと腕を掴まれてそれは叶わなかった。

「レイはアンタのsisterよ」
「わかってるよ、んなこと。だからだろ。アイツきっと泣いてる!」
「Mana!」
「let me go!」
「No!」

散々放ったらかした挙句今度は引き離そうだなんて、都合が良すぎるではないか。俺達兄妹はいつだって二人で寄り添ってきたのだ。寂しさを埋めるために、いつだって二人で。

「Laylaを返せ!」

睨み付けると、大きな目が見開いた。左右同じ色の、偽物の瞳。

「お前に何がわかんだよ!マリーはいつだってメーシーに守られてきた。そうだろ?俺はいつだってレイを守ってきた。お前達の代わりにいつだって俺がレイを守ってきたんだよ!」

半身を奪われた。そうだ。そんな痛みが胸に走る。溜まりかねて零れた涙が、右側だけ頬を伝った。

「Mana…」
「レイを迎えに行く」
「それはダメです」

すとんと下ろされたセナが、ペタペタと足音をさせて歩み寄って来る。

「大人になるには痛みが伴うとはるが言ってました。今マナのここが痛いのは、大人になるために仕方がないことです」

軽く握られた拳が、コツンと胸に当てられた。
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