執着王子と聖なる姫
「一緒に寝ましょう」

ギュッと右腕に押し付けられたのは、それはそれは抱き心地の良さそうな体。俺だって男なんですけど。と胸の内でごちたところで、このエアリーディングを極端に苦手とする女には届かなさそうだ。

「クマと寝ろよ」
「何だか怖いです」
「何が?」
「声です。こ、え」

確かに、耳を済ませば聞こえてくるその声は、何も知らないコイツにとっては何やら恐ろしいもののように聞こえるかもしれない。

けれど、そんな声を聞かされながら、あまつさえ妹以外の女と何もしないで同じベッドで眠るなどという高等テクニックは、育ち盛りの俺には備わっていない。

「お前ねー、警戒してんだかしてねーんだかどっちよ」
「警戒?どうしてですか?」
「そんな格好して男のベッドに潜り込んだら、襲ってくれって言ってるようなもんだろが。もっと警戒しろ」

ピンッと額を指先で弾くと、むぅっと頬が膨れる。

「よくわかりません」
「わからなくていいよ」
「どうしてですか?」
「え?それ俺に言わせる?ヤな女だねー」
「教えてください」
「だーめ」

背を向けると、ぺたりと引っ付く体。おまけに腕を回されたものだから、逃げ場が無くなってしまった。

「セナ、やめといた方が身のためだぞ?」
「どうしてですか?」
「俺が男で、お前が妹じゃなくて女だから」
「どうゆう意味ですか?」

よいしょと回された腕を退け、そのまま向き合う。腰を引いて体を密着させると、じっと黒目がちの猫目が俺を見つめた。

「そんな顔してっと、kissされるよ?」

キュッと閉じられた瞼は、OKのサインだろうか。寝不足が続く頭では、その程度のことしか考えられなかった。

まぁ、聞こえてくる声があれでは、他に気を回せと言われても難しいというものだ。
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