執着王子と聖なる姫
「セナは気持ち良いですよ。マナに触れられると、何だかここがきゅんとします」
「凄いねー、お前は。誘ってるとしか思えねーわ」
「何に誘うんですか?一緒に寝てくれますか?」

無知とはこんなにも恐ろしいものなのか。何も知らないから、こんなにも堂々と気持ち良いだなどと言えるのだ。知っていたら言えまい。

「恥ずかしくねーの?丸見えだけど」
「恥ずかしいですか?」
「俺服着てるのに、お前裸同然だけど」

ツンと反対側の手で頬を突くと、みるみるうちに紅く染まっていく。月明かりの下でもハッキリと見えるのだから、相当のものだろう。

ふっと笑うと、今更ながら胸元が両手で隠された。本当に、今更ながら。

「何?急に恥ずかしくなった?」
「…違います」
「だったら何で隠すんですかー?」
「もう!何でそんな意地悪言うんですか!」
「だって、俺もう我慢の限界」

スリップを上げてやると、サッと隠された。ギュッとTシャツの裾を掴み、もじもじと何か言いたげだ。

「次は下まで脱がしちゃうからな。気をつけろ?」

つうっとスリップ越しに太ももをなぞると、キュッと瞼が閉じられる。これで懲りてくれただろう。と、そんな勝手な思い込みは、またもや裏切られることとなった。

「マナに触れられると気持ち良いんです。だからきっと、セナはマナが大好きなんです」

つい今言ったばかりだと言うのに。次は無いから気をつけろ、と。そう言ったつもりだったのに。同じように太ももをつうっとなぞられ、ハッとその手を掴む。

「そうゆうのは、俺になら何されてもいいって思うようになってから言ってくれる?」
「どうしてですか?」
「ほら来た。俺も健全な男子高校生だから、我慢出来る時と出来ねー時があんの」
「何を我慢するんですか?」
「んー…色々。痛いこととか、気持ち良いこととか」
「痛いと気持ち良い、どっちですか?」
「どっちも」

嘘はついていない。ただ細かく説明しなかっただけだ。

「腕枕してやっから大人しく寝てくれる?」
「一緒に寝てくれるんですか?」
「今日だけ特別な」
「ありがとうございます。マナ、大好きです」

明日から是非ともパジャマを着て寝てもらおう。と、ため息をついた夜。
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