執着王子と聖なる姫
妹の口癖は、「マナ以上の人じゃないと付き合わない!」だった。その妹が認めたのだ。龍二は俺以上なのだろう。確かに俺は、龍二みたく生真面目で一本気なタイプではない。それは否定しない。

「何か…切ないねー。俺も彼女作ろ」
「え?お前セナと付き合ってんじゃないのかよ」
「付き合ってねーよ」

あっさりと否定した俺に、レイまでもが驚きの声を洩らした。

「アンタまだマナに食べられてないの!?」
「食べる?セナは食べ物ではありません」
「そうじゃなくて!せっ…」

グッジョブだ、龍二。今お前の手がそこになくとも、間違い無く俺の手が伸びていた。乱暴な俺の手に塞がれるよりも、優しい龍二の手に口を塞がれる方が妹も良いだろう。

「せ?何ですか?」
「お前は知らなくていい!」
「もう!龍ちゃんには訊いてません!訊いても教えてくれないのはわかってます!」

ジタバタと動く妹を宥めながら、龍二はあっちにこっちにと忙しそうだ。と言うわけで、必然的にぶぅっと頬を膨らせたセナの攻撃対象は俺へと絞られた。

「マナ?」
「あー…うん」
「マナはセナを食べるんですか?そうゆう種族ですか?」
「怖いこと言うな。俺は日本人だ」

どうしたものか。と、真っ直ぐな瞳にじっと見据えられながら思案する。

「わからないことは何でもマナに訊けばいいと、メーシーもマリちゃんも言ってました」
「相変わらず無責任な親だな。あんな親になっちゃダメだよー?」
「無責任ではありませんよ?マナだったら何でも教えてくれるってメーシーが言ってました」

どうやら父は俺とセナとをそうゆう関係にしたいらしく、あちらこちらに策を張り巡らせている。

毎晩我慢を強いられるこっちの身にもなってほしい。それでなくとも、毎晩kissをされて、今にも俺の理性の糸はプッツリといきそうだというのに。

「マナ?」
「あぁ、うん。そのうち、な」
「またそれですか」
「それです。それで勘弁してください。俺をこれ以上困らせないでください」
「じゃあ、セナがもっとキスが上手くなったら教えてくれますか?」

ニヤリ、と龍二の目が細まる。言いたいことはわかるけれど、ここは是非とも呑み込んでほしい。それくらいのエアーリーディングは出来ると信じている。友として。
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