執着王子と聖なる姫
コイツもコイツで悪い奴ではないのだ。
「どうしてですか?」は少々面倒くさいけれど、それは自分の無知を知っているからこそだとポジティブに考えることにした。

「で、レイとリュージはどこまで済ませたの?」

我が家のテロリストは今日も上機嫌だ。
遠い目をしながらそんなことを思った。

「うん。その潔さが好きだよ。でも、慎みを持て、慎みを。日本人だろ?」
「アタシは海外育ちだから、そうゆう日本人特有の感覚はわかんないわ。それに、大事なことよ?」
「はい、そうですねー。龍二、ご愁傷様」
「はっ!?お前助けてくんないのかよ」
「いやいや。俺が何言おうがあの人は訊くし、お前が黙ってようがアイツがペラペラ答えるって」

コソコソと母に耳打ちをしている妹を指すと、面白いぐらいにがっくりと項垂れる様子を目の当たりに出来た。付き合ってみればわかるのだけれど、龍二はそんなにクールな男ではない。ただ不器用なだけなのだ。

「諦めろー?もうヤッちまった後だろ?」
「いや、それもそうなんだけど…」
「メーシーに男のルールとやらの講義をしかと受けるが良い。俺も昔受けた」

「何ですか?それは」

「うん。来ると思った」

予想が付くようになったあたり、俺も随分と慣れて来たのではないだろうか。そっと頭を撫でると、ゆるりと猫目が細まる。こうしていると本当に猫みたいだ。

「大人の男のルールだよ」
「それは男の人限定ですか?」
「まぁ、そうだな」
「女の人にルールは無いんですか?」
「んー。あるんじゃね?俺はわかんねーから、知りたいならマリーに訊け」
「わかりました」

目の覚めるようなビビッドなピンク色が、ふわりと揺れた。妹によく似合っていたそれは、色の白いセナにもよく似合う。むちっと晒された太ももが目の毒だ。
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