執着王子と聖なる姫
日本人の男は、言葉で愛情表現をすることをどうやら苦手としているらしい。男は背中で語るなどという言葉があるらしく、龍二みたく口下手な男がデフォルトだと言う。
龍二にしてみれば、「I love you」などと平気な顔をして口にする俺や父は、尊敬に値するらしい。それは、育った環境の違いと言うものだろう。
けれどそんな俺でも、セナにだけはそう簡単には言えなかった。
いくら好きだ、大好きだと言われても、決して俺の口からそんな言葉が出ることはない。そんな時、父やハルさんを心底羨ましいと思う。
「で?どこまで進んだ?」
表面上はにっこりと笑っているけれど、目が笑っていない。
二人の父親がそんな風に詰め寄るものだから、それぞれの「彼女の父親」を前にした俺達は、静かに視線を落とした。
「黙秘はダメだよ?レイと龍二君はどこまで進んだのかな?マナ」
「え、俺?龍二に訊けよ」
「さすがに俺には話し難いだろ?」
「目の前に居たら同じだろ」
ふふふっと笑った父が、チラリとハルさんに視線を送る。もうそれだけで、背中には冷たい汗が伝った。
「龍二、セナと愛斗はどこまでいってんや?」
「知らないっす」
「嘘吐いてもあかんぞ」
「マジ知らないから。とーちゃん勘弁してよ」
休日の昼下がり、庭でキャッキャとはしゃぎながら水遊びをしている女四人と、クーラーの利いた室内で、更に冷たい空気を漂わせている男四人。息子二人にとってはとんだ災難だ。
龍二にしてみれば、「I love you」などと平気な顔をして口にする俺や父は、尊敬に値するらしい。それは、育った環境の違いと言うものだろう。
けれどそんな俺でも、セナにだけはそう簡単には言えなかった。
いくら好きだ、大好きだと言われても、決して俺の口からそんな言葉が出ることはない。そんな時、父やハルさんを心底羨ましいと思う。
「で?どこまで進んだ?」
表面上はにっこりと笑っているけれど、目が笑っていない。
二人の父親がそんな風に詰め寄るものだから、それぞれの「彼女の父親」を前にした俺達は、静かに視線を落とした。
「黙秘はダメだよ?レイと龍二君はどこまで進んだのかな?マナ」
「え、俺?龍二に訊けよ」
「さすがに俺には話し難いだろ?」
「目の前に居たら同じだろ」
ふふふっと笑った父が、チラリとハルさんに視線を送る。もうそれだけで、背中には冷たい汗が伝った。
「龍二、セナと愛斗はどこまでいってんや?」
「知らないっす」
「嘘吐いてもあかんぞ」
「マジ知らないから。とーちゃん勘弁してよ」
休日の昼下がり、庭でキャッキャとはしゃぎながら水遊びをしている女四人と、クーラーの利いた室内で、更に冷たい空気を漂わせている男四人。息子二人にとってはとんだ災難だ。