執着王子と聖なる姫
「自分は誰の一番でもないって。だから、俺の一番にしてやるって言ったんです」
「あいつそんなこと言うてたんか…あほやなぁ。一番に決まってんのに」
「わかってるんじゃないですか?どれだけハルさんのことが好きでも、ちーちゃんには敵わないって」
「いや、それとこれとは別やろ」

親は本当に都合が良い。
子供がそんな消化不良の思いを抱えていたとて、そう言って消化しろと言うのだから。

子供とてバカではない。
「愛してる」や「一番」に別枠があることくらい知っているのだ。

「俺、わかるんです。アイツのそうゆう気持ち。だから、出来る限り俺で埋められるところは埋めてやりたいと思ってます」
「ほなセナと付き合うたらええんちゃうの?別に俺は反対せんで」
「セナがそれを望んだ時にそうするつもりです。今はまだ、アイツ自身がそうゆうのをいまいち理解してないみたいなんで」
「それがホントの理由?」
「うっせーよ、メーシー」

出来れば黙っていてほしかったのだけれど、そうは問屋が卸さないというわけだ。さすがあんな天の邪鬼と何十年も付き合っているだけのことはある。

「ホントの理由教えてやれば?そうじゃなきゃ王子は納得しないよ、きっと」
「あかん…さすがメーシーの息子や。掴めん!」
「まぁ、そう言わないでやってよ。麻理子に似てちょっと素直じゃないんだ。これもこれで可愛いもんだよ?」

ふふふっといつものように笑う父は、俺の思いを全て見透かしている。うん。さすがだ。


「俺、望まれたいんですよ。望まれて、欲しがられて、それで付き合いたい。卑怯なのはわかってるんですけど、そうしてもらえなきゃ心底好きにはなれないって言うか…まぁ、そんな感じです」


よく言えましたーなどと軽く言いながらパチパチと手を叩く父に、大きなため息を一つくれてやる。

こんなこと、絶対にセナには言えない。
どんなに重い男だと思われそうで、怖くて口に出せやしないのだ。

そんな言葉を友人の前で言わされて、恥ずかしいことこの上ない。
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