執着王子と聖なる姫

 独占欲と執着心

依存心などというこの厄介なものは、いつか消えて無くなるのだろうか。それとも、依存の対象を他に移すまでは色濃く残っているものなのだろうか。

大学に行って心理学でも専攻してみるか。

そんなことをぼんやりと思いながら、例の如くセナの襲撃を受けていた。


妹とセナが入れ替わって二週間。短い日本の夏休みも、もうすぐ折り返し地点に到達する。

龍二のおかげで、妹はご機嫌に毎日を過ごしているらしい。セナもセナで、こうしてご機嫌に俺に甘えて日々を過ごしている。

色んな意味で一番被害に遭っているだろう俺は、続く寝不足で滅入る寸前だ。


「セナさん、そろそろいいですか?」


ぺたりと引っ付く頭を撫でながら、力無く問う。

眠ってしまったのだろうか。何の反応も返さないまま、段々と重くなっていく体。

「無防備だねー、相変わらず。食っちゃうよ?」

手を出さないと約束したわけではない。と言うことは、出そうと思えばいつだって出せるのだ。それを自分自身が納得するかしないかは別として。

好きだ、大好きだと言う。
もっと触れてくれと強請る。

けれど、それ以上は何も言わない。わかっているのかいないのか。何とも掴めない女だ。

「一言欲しいって言ってくれりゃ抱いてやんのに」

眠っているのを良いことに、独り言も絶好調だ。

少しくらい良いだろう。唯一愚痴が吐き出せる龍二には、いつも妹がべったりだ。妹の前でそんな情けない姿を見せるのは、兄としてのプライドが許さない。兄貴はいつまでもカッコイイままでいたいのだ。

「お前は怖い女だねー。天使のフリした悪魔か何かか?ん?」

ツンと頬を突いても、その瞼が開く気配は無い。諦めて体を倒し、そのままゴロンと左側へ降ろす。
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