執着王子と聖なる姫

 王子流のしつけ方

ハルさん曰く「愛は苦しいもの」らしいけれど、これが「愛」ならばかなりのものだ。

一度そのあたりを詳しく聞かせてもらいたい。と、リビングのソファから庭ではしゃぐ大人達をぼんやりと眺める。

「外に行かないんですか?」
「ん?俺はいい。お前行ってくれば?」
「マナが行かないならセナもいいです」

休日の恒例とも言えるべきバーベキュー大会の真っ只中、無駄に広い我が家の庭で大人達は大はしゃぎだ。

うちの父に、ハルさんにケイさん。
どうやらこの三人は俺が思っていた以上に仲が良いらしく、職種はそれぞれに違うはずなのに、必ずと言っても過言ではないほど休みを被せてこうして我が家に集まって過ごしている。

ハルさんが来ると言うことは、勿論ちーちゃんとうちの妹カップルも来る。けれどどうしたことか、ケイさんの家族は一度も連れて来たことが無かった。

「セナ、ケイさんって結婚してるよな?」
「はい。してますよ」
「何で家族連れて来ねーの?」
「わかりません」

ふぅんと短く返すと、置きっぱなしにされていた大きな紙袋からセナがワンピースを取り出した。

「こうゆうことするからじゃないですか?けーちゃんはちーちゃんとセナのお洋服を作ることに命を懸けていて、家族を構う暇がありません」

淡いピンク色のワンピースが二枚。サイズ違いのデザイン違いなので、二人分なのだろう。

見るからに甘い雰囲気を漂わせるそれは、いかにもあの二人…ハルさんとケイさんが好んでこの母娘に着せそうな物だ。
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