執着王子と聖なる姫
「こんにちわー」
普段から想像もつかないような元気一杯の声を出し、セナが扉を開く。ひょこっと顔を覗かせた俺の目に飛び込んで来たのは、柔らかく微笑んで女の人の髪を撫ぜている父の姿だった。
見られた側よりも、見てしまった側の方が気まずい。そんなことは、よくあることではないだろうか。目の前の父は、気まずさを感じるどころか、堂々としているようにも見える。
「いらっしゃい。セナちゃん、マナ」
「こんにちわ、メーシーと…モデルさん?ですかね」
「佐野さん、この子達だぁれ?」
髪を撫ぜられ気持ち良さそうにしていた女の人が、父に寄り添ったまま視線だけを動かした。こんなところを母が目撃したならば、間違い無く我が家は地獄絵図と化すだろう。一人戦々恐々としている俺を見遣り、父は再びにっこりと微笑んだ。
「ハルの娘さんと、俺の息子だよ」
「佐野さんの?あっ!ホントそっくり!」
「でしょ?」
「すごぉーい!佐野さんってば、若い頃こんなにカッコ良かったの?」
「今は大人の魅力がプラスされて、よりイイ男になってるだろ?」
「私は勿論今の佐野さんの方が好きよ!」
「ふふっ。ありがとう。さぁ、お喋りはこれくらいにして行っておいで?」
「またね、佐野さん」
ご機嫌に去って行くその人を敵視してしまうのは、息子としては当然だろうと思う。思わずうーんと唸った俺に、父がふっと短く笑った。
「何難しい顔してんの?」
「いや…どうかな、あれは」
「あれ?」
「いつもあんななわけ?」
「そうだけど?」
あまりにあっさりと肯定されたものだから、その先が続かない。
どうしたものか…と、何とか視線で訴えようとする俺の思いを察して、我が家の誇るスーパーエアーリーダーは柔らかに微笑んだ。
「あれは仕事。麻理子に比べたらただのガキだよ。いや、比べること自体麻理子に失礼だな。うん」
我が家の誇るスーパーエアーリーダーは、相変わらずいつ何時でも驚くくらい嫁バカだった。
心配して損した気分だ。バカらしい。
普段から想像もつかないような元気一杯の声を出し、セナが扉を開く。ひょこっと顔を覗かせた俺の目に飛び込んで来たのは、柔らかく微笑んで女の人の髪を撫ぜている父の姿だった。
見られた側よりも、見てしまった側の方が気まずい。そんなことは、よくあることではないだろうか。目の前の父は、気まずさを感じるどころか、堂々としているようにも見える。
「いらっしゃい。セナちゃん、マナ」
「こんにちわ、メーシーと…モデルさん?ですかね」
「佐野さん、この子達だぁれ?」
髪を撫ぜられ気持ち良さそうにしていた女の人が、父に寄り添ったまま視線だけを動かした。こんなところを母が目撃したならば、間違い無く我が家は地獄絵図と化すだろう。一人戦々恐々としている俺を見遣り、父は再びにっこりと微笑んだ。
「ハルの娘さんと、俺の息子だよ」
「佐野さんの?あっ!ホントそっくり!」
「でしょ?」
「すごぉーい!佐野さんってば、若い頃こんなにカッコ良かったの?」
「今は大人の魅力がプラスされて、よりイイ男になってるだろ?」
「私は勿論今の佐野さんの方が好きよ!」
「ふふっ。ありがとう。さぁ、お喋りはこれくらいにして行っておいで?」
「またね、佐野さん」
ご機嫌に去って行くその人を敵視してしまうのは、息子としては当然だろうと思う。思わずうーんと唸った俺に、父がふっと短く笑った。
「何難しい顔してんの?」
「いや…どうかな、あれは」
「あれ?」
「いつもあんななわけ?」
「そうだけど?」
あまりにあっさりと肯定されたものだから、その先が続かない。
どうしたものか…と、何とか視線で訴えようとする俺の思いを察して、我が家の誇るスーパーエアーリーダーは柔らかに微笑んだ。
「あれは仕事。麻理子に比べたらただのガキだよ。いや、比べること自体麻理子に失礼だな。うん」
我が家の誇るスーパーエアーリーダーは、相変わらずいつ何時でも驚くくらい嫁バカだった。
心配して損した気分だ。バカらしい。