執着王子と聖なる姫
「これ見て、お前はどう思う?」
「ちーちゃんは幸せそうです。マリちゃんは…とっても綺麗です」
「そう、それ」
「どれですか?」
「要はさ、想いが叶うか叶わないかだよ」

うーんと唸るセナの頭をポンポンと撫で、頭を捻る。

父が居るだけにこの先は言い難いのだけれど、致し方ないと諦めるしかなさそうだ。この人が気を利かせてこの場を去ってくれるとは到底思えない。

察しているからこそこの場に留まる。そんな嫌な男なのだから。

「お前はさ、俺に好きって言われたらどう?」
「勿論嬉しいです」
「だろ?でも俺は言わない」
「はい。足りないんですよね?」
「そう。だからお前はどうしてる?」
「言ってもらえるように頑張ってます」
「それだよ。嬉しいのがちーちゃん、頑張ってんのがマリー」
「なるほど!」
「わかったか?よしよし」

そっち方面に疎いだけであって、決して頭が悪いわけではないのだ。嬉しくなって思わず抱き寄せると、ふふふっといつもの笑い声が聞こえた。

「マナもすっかり男だね」
「俺はいつだって男だよ」
「そうゆうのじゃなくてさ。ちゃんと恋をすると、男も女も変わるんだよ」
「俺は別に変わってねーよ」
「照れちゃってさー。好きな人には優しくしたい。誰だってそうだよ。俺だって王子だって、愛する奥さんにはとびきり優しいじゃないか」
「一緒にすんな。俺はちゃんと厳しく躾けてんだよ」

ついついムキになって言い返してしまうのは、俺がセナと違って素直でない証拠だろう。反対に、腕の中のセナはにこにこと嬉しそうにしている。

「俺は厳しいよな?」
「ここは空気を読んで、そうですと言っておきます」
「普段読めてないくせに、こうゆう時だけ得意げになんじゃねーよ」

むぎゅっと頬を抓んでも、それでもセナは嬉しそうで。こんな顔をされれば、父の言葉を認めざるを得ない。けれども、そのまま言葉に出来ないのが俺の母譲りの天の邪鬼さだ。


「もっと愛してくれたら俺のsteadyにしてやるよ」


こんな条件、今までどの女にも出したことがない。

セナだから、それでも受け入れてくれる。
セナだから、それでもにっこりと笑って頷いてくれる。
セナだから、愛されたい。

そう認められるようになっただけ、進歩だと思う。

まぁ、俺の言葉に父は目を丸くして驚いていたけれど。
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