COLORS~Clear~
「これでも、けっこう絞ってもらったんだ。相手が透子だと知った途端、殺到したらしい」
「そう、なの?」
「俺たちからすれば。そんな大袈裟なことじゃないのにな」


郁サンは、フッと苦笑いを浮かべると、デザートに手を伸ばして。


「ここのわらび餅は絶品だぞ」


優しく微笑んだ。


「ん…」


いよいよ。
ようやく…?

公になる、私たちの結婚…。

嬉しくないわけじゃないのに。
どこか、気持ちが弾まないのは……。


「おいしい!噛まなくても口の中で溶けちゃう」
「だろ?」


来週は取材を受けて、その次の週には出張がある。

ちょうど、


―良かった…


思った。

お稽古には行けないし。
今はきっと。
霧島クンには、会わない方がいい…。


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