COLORS~Clear~
「さすがだな」


取材を終えて、帰り道。
運転席。
郁サンが、微笑む。

この後、まだ予定が入ってる郁サン。
一緒にいられるのは、家に着くまでの束の間の時間。
それでも送りたいからと。
車を出してくれた。


「緊張なんて、微塵も感じさせなかったな」
「そう…?」
「だからこそ。完璧に見えるんだろうな」
「えっ…?」
「完璧に振る舞ってる訳じゃないのに。見せようとしてるわけじゃないのに。そう、見えてしまう。完璧な人間なんて。存在しないのにな…」
「郁、サン……」
「完璧だと思われるのは。疲れるし、辛いだろ…?」
「──────」


ドキッとした。


< 283 / 328 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop