COLORS~Clear~
私が生まれた家は、裕福で。
完璧に見られていた私は、全てが揃っていると思われていた。


『幸せだね』


…と。

確かに幸せだったけど。
それは裕福だからじゃないし、全てが揃っているなんて、思ったこともない。

不幸だと思ったことも、もちろんないけど。
私はいつもどこか、寂しかったように思う。

私に踏み込んでくる人はいなかったし。
私も、みんなに踏み込んでいこうとはしなかった。

完璧に見えるよう、振る舞っていた、ツケ…。

それは私自身が、招いてしまったこと…。

今までつき合ってきた彼に、

“強い女”

言われても。

私は否定も、してこなかった。
そうじゃないんだと。
分かってもらおうと、しなかった…。


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