愛する娘へ〜母からの手紙〜
父も、私の気持ちを理解してくれ、一緒に母を説得してくれました。
「お母さん、気管切開しよう」
母は、『嫌だ』と首を横に振るだけで、一向に納得してくれません。
「嘆が詰まったら苦しいでしょ?鼻からの吸引じゃ取り切れないんだって。切開したほうが楽だし、苦しくないんだよ?」
そう問い掛けると、母の口が何か言いたそうにパクパクと動いた。
「なに?」
『あ、い、う、え、お…』と大きく書いてあるボードを手に取り、母に見えるように掲げる。
このボードで、「最初の文字は何?」と一つ一つ探していかないと、母が言ってることは私たちには伝わらない。
『あ』、『い』…
少しずつ指をずらしていく…
すると、『く』のところで母がパチパチと瞬きをした。
母は、声を出したり、指で差したりできないので、代わりに目をつぶって意思を伝えていました。
一文字目は、『く』
二文字目は……