愛する娘へ〜母からの手紙〜
また、ボードの文字を一つずつ指でなぞっていく。
母の一言を捜すのに、30分くらいは裕にかかってしまいます。
ボードを持つ手が、痺れてきて、途中でボードを降ろしたくなる。
でも、ボードを降ろしてしまったら、母の言葉を聞くのを諦めてしまったことになるような気がして…。
私は、母の言葉がわかるまで、決してボードを降ろしませんでした。
『く』、『る』、『し』、『く』、『て』、『も』、『い』、『い』、『ど』、『う』、『せ』、『す』、『ぐ』、『し』………
そこから後に続く言葉は、探さなくてもわかりました。
私はボードを降ろし、母のベッドの傍らにしゃがみ込んだ。
「私だって、すごく悩んだんだよ?お母さんの喉に穴なんて開けたくない……だけど、切開しなかったら、嘆が喉に詰まって呼吸困難になったりするかもしれない……私、お母さんを失いたくないの…私のお母さんはたった一人、お母さんしかいないんだよ?代わりはいないんだもん。何にもしてくれなくていいから、私のそばで生きていてくれるだけで心の支えになるんだから」