紅蓮の斜陽
そういうわけでさようなら。
笑って言えば、局長は奥歯を思い切り咬んで「切れ」ともう一度叫んだ。
気合を入れる咆哮が辺りを包んだ、その時である。
「幻覚とは失礼だな」
「………な、なっ!!」
屯所の屋根に二つの影が立っている。
一同がそれを仰ぎ見れば、それは昨日訪れた西洋人であった。
同じような服を着た、とても綺麗な女性を連れて二人は此方を見下ろしていた。
「この建物広くて入口がわかんなかったぞ、畜生」
「いや…宿屋にいるって言ってたじゃねえか」
「気になって見に来たんだよ。
なんだ、小刀なんて必要なかったらしいな」
唖然とする一同を気にせずに男はふわりと屋根から下りてくる。
取り囲まれた緋次に歩み寄ると頭を掴んで、「幻覚じゃない」と再度訴えた。