カローレアの金
「お前に言われたくない…」
アンは少しむくれた。
「俺はお前ほど細くは無い。しかも丈夫だ」
男は胸を張って鼻高々にそう言った。
「二十二番、五十六番‼次だ‼準備をしておけ‼」
大会の進行係の者がそう声を張り上げる。
「おっと…俺の番か…」
口元に笑みを浮かべた男は少し足を進めてからアンの方を向き直り
「何でだろうな、お前とは最後に戦う気がするよ‼お互い頑張ろうな‼」
そう言い残して男は去って行った。
アンは無表情でその男を送り出し、壁際によった。
壁にもたれながら空を見上げる。
仲間達は上手くやれてるだろうか…などと考えながら。
しばらくした時に、会場の方から一際大きな歓声があがる。
会場へと通じる道から、あの男が帰ってきた。
「お、おい、何があったんだ」
近くにいた男にアンが尋ねる。
「いや、俺もわからん…今連れが会場を見に…」
すると、会場の方から一人の男が息を切らせてきた。
「どうだった?」
「あの男…今回の大会の優勝候補を瞬殺しやがった…かなり体格も違う男を、一瞬で…一撃で…」
そう報告する男は青ざめていた。
「つ、次‼三十六番と四十八番‼」
進行役が慌てて番号を叫ぶ。
三十六番はアンの番号だった。