カローレアの金
会場へと足を進めるアンの視界に、さっきの茶髪の男が入る。
「お、お前の番か。頑張れよー」
「…ああ」
アンは一言だけ返して、会場に入って行く。
会場は、円の形をしていて、周りには段々になっている席があり、観客達がアンを見下ろしていた。
一際高いところには女王と思われる人物が座っていた。
観客達の中にいる仲間を見つけ、とりあえず上手くやっていることにアンは安心した。
「ここに整列‼」
審判にそう言われ、並び、対戦相手と向かい合う。
アンは深く布を被り、髪が露出しない様にした。
「この戦いは知っての通り何でもありだ。では…始め‼」
その一声に観客は盛り上がる。
相手の男はがたいが良く、身長もアンよりはるかに高い。
男は体でリズムを刻みながら顔の前で手をセットした。
そしてアンの顔面めがけて拳を繰り出すが、アンはあっさりとかわす。
その男のパンチは、ジャンのものと比べればハエが止まることができる速さに感じた。
しばらくアンはその男の攻撃をよけていたが、途中ジャンからの「負けそうになってから…」という言葉を思い出す。
しかし、こんな男に振りとはいえ、負けることをアンのプライドが許さなかった。
そしてアンは壁際へと逃げまどうかのように見せかけて男を誘導する。
「あいつ…‼」
「お頭、アンの奴…」
観客席から見ていたジャンの元に仲間の一人がやってくる。
「ああ…あいつ、負ける気なんかさらさら無ぇ…一撃で仕留めるつもりだ…」
「やっぱり…」