カローレアの金

「まあ相手の男も相当弱そうだしな…アンが負けたくないって気持ちも分からなくはないが…
勝負が長引かなきゃ仕事がやりにくい…」

そんなジャンの憂鬱な気分など知らずに、アンは男を壁際に誘導することに成功していた。


「へっへ、なんだよお前、逃げまどってばかりじゃねえか」

相手の男はアンを挑発するように笑った。

「さあ、それはどうかな」

アンは頭の布をしっかり押さえながら走り出し、壁を蹴って男の頭の高さまで上がり…
男の頭に綺麗に蹴りを決めた。


男の首が思い切り横を向き、揺れ始め、ついに男は倒れた。


「…勝者、三十六番‼」

審判がそう宣言すると観客達から一斉に歓声が沸き起こった。


「…あの子、かなり身が軽いみたいですね…」

観戦していた女王がアンを見ながら大臣に話しかける。

大臣も驚きながら

「壁を蹴ってあの高さまで行くとは…すごいですな」

「…噂の金髪の盗賊の子もそれくらいできるのかしら」

女王がそうつぶやくと

「陛下‼今は大会に集中なさってください‼優秀な人材を軍に入れるためですよ‼」

「わかってます。でもこの大会にカインが参加してますし…カインに勝てる人なんていないんじゃないかしら」

「それはそれでいいです。わが軍の強さが証明できますし。それに誰もカイン隊長に勝つことができなくても、二位の方を軍に誘うか否か…決めるのは女王、あなたなのですからしっかり見てていただかないと」


女王はため息をつきながら、会場から出て行くアンを見つめていた。



< 13 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop