カローレアの金
「まあ相手の男も相当弱そうだしな…アンが負けたくないって気持ちも分からなくはないが…
勝負が長引かなきゃ仕事がやりにくい…」
そんなジャンの憂鬱な気分など知らずに、アンは男を壁際に誘導することに成功していた。
「へっへ、なんだよお前、逃げまどってばかりじゃねえか」
相手の男はアンを挑発するように笑った。
「さあ、それはどうかな」
アンは頭の布をしっかり押さえながら走り出し、壁を蹴って男の頭の高さまで上がり…
男の頭に綺麗に蹴りを決めた。
男の首が思い切り横を向き、揺れ始め、ついに男は倒れた。
「…勝者、三十六番‼」
審判がそう宣言すると観客達から一斉に歓声が沸き起こった。
「…あの子、かなり身が軽いみたいですね…」
観戦していた女王がアンを見ながら大臣に話しかける。
大臣も驚きながら
「壁を蹴ってあの高さまで行くとは…すごいですな」
「…噂の金髪の盗賊の子もそれくらいできるのかしら」
女王がそうつぶやくと
「陛下‼今は大会に集中なさってください‼優秀な人材を軍に入れるためですよ‼」
「わかってます。でもこの大会にカインが参加してますし…カインに勝てる人なんていないんじゃないかしら」
「それはそれでいいです。わが軍の強さが証明できますし。それに誰もカイン隊長に勝つことができなくても、二位の方を軍に誘うか否か…決めるのは女王、あなたなのですからしっかり見てていただかないと」
女王はため息をつきながら、会場から出て行くアンを見つめていた。