カローレアの金
「お疲れ」
会場から出たアンを待ち受けていたのはあの茶髪の男だった。
「お前身軽だなー」
男はケラケラ笑う。
「…どうも。ところで…」
アンは参加者の数を目視で確かめた。数えなくても分かるくらい減っている。
「何で参加者が減ってるんだ?」
「ああ。俺とお前の戦いを見て、棄権する奴らが続出。参加者は最初の三分の一になったらしいぞ」
「へえ…」
先ほど、この男が瞬殺したということを教えてくれた奴らも消えていた。
「…なあ、お前名前は?」
茶髪の男が目を輝かせながらアンに聞く。
アンは答えようとしたがすぐにその口を閉じた。アン、という名前は女の名前…名乗ってしまえばばれてしまう。
「……人に聞くときは自分から、だろ」
アンは冷たくそう言った。
「あれ、言ってなかったか?悪いな。俺はカインだ」
「…カイン…?」
「ああ」
アンは思考を巡らせた。カインという名前には聞き覚えがある…でもどこで聞いたのか思い出せない…
「さあ、お前の名前は?」
カインはアンに再び尋ねた。
「…ロイ、だ」
アンは偽名を使うことで何とかこの場を切り抜けた。