カローレアの金
大臣は腰にある短剣を抜き、女王に差し出した。
こうなった女王を止められないことを知っていたので、何も言わなかった。

女王は短剣を受け取って、アンに渡す。

「私にギブアップさせることができたら、あなたの勝ちです。
けれど私があなたにギブアップをさせられたら…あなたの負け」

「シンプルでわかりやすいな。いいぞ」

アンは短剣を受け取り、軽く振る。


「…あんたに武器はないのか?」

「武器は、私とあなた、二人合わせてその一本の短剣です」

「…奪い合うってことか」

「ええ」

女王はにっこり笑い、数歩後ろへ下がる。

「それじゃあ始めましょうか」


女王がそう口にした途端にアンが動き出した。

「まあ早い」

女王が嬉しそうに笑う。

アンは女王を床に倒そうと体当たりを試みるが、あっけなくかわされてしまう。

「…邪魔ですね」

女王は頭にある王冠を取って大臣に

「これ、持っていなさい」

と放り投げた。
大臣は慌てながらも無事に王冠をキャッチする。


「…それ、大事なものなんじゃないのか?」

アンが女王の行動に目を見張る。

「大事なものですね…亡き夫の頭の上でも輝いていたものですし、何より高価です」

「…決めた。勝ったら、あれをもらう。あの王冠を」

アンがそう宣言すると大臣も女王も目を丸くした。

「あらまあ…それは…負けられませんね」


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