カローレアの金
女王はドレスの裾を結んだ。
本当は破り捨てたかったが、そんなことをしたら大臣に説教されることが目に見えていたのでグッとこらえた。
「動きにくそうだね、そのドレス」
「まあそうですね。でもまあ良いハンデでしょう?」
女王は皮肉を込めてにこりと笑った。
アンは自分の頬の筋肉が引きつったことを感じ取った。
アンは女王との間をじりじりと詰める。
大股三歩程の距離になった時、アンは地面を勢いよく蹴り、女王の頭上を飛び越えた。
「噂通りの身軽さですね」
女王は嬉しそうに笑いながらアンの着地地点を見つめる。
「でも…」
女王はアンが着地すると同時に、アンが短剣を持っていた左手を下から右足で蹴りあげ、短剣を空中に放る。
「へっ!?」
驚いたのはアンだった。
「勝負あったな…」
観戦していた大臣がそうつぶやくと同時に、短剣は女王の右手の中に。
「せっかくの身体能力…生かしきれてないようですね」
女王は微笑みながらアンの首元に短剣を当てていた。
「…参り、ました…」
アンは首元に当てられている短剣を見ながら小さくそう言った。
女王は短剣を大臣に返し、代わりに王冠を受け取る。
「さすがですな」
「いい運動になりました」
女王は結んでいたドレスの裾を解き、アンと向かい合う。