カローレアの金
「お前いくつ?」
「五歳…」
「まだ平気だな…よし、行くか」
アンは食糧が入った紙袋を片手に持ち替え、ひょいっと子供を抱えあげた。
「え、どこ行くの?」
「んーうるさくて、騒がしいところ」
「あ‼いたぞ‼」
子供を抱えたアンの遥か先に衛兵がいた。
「早いなー」
そんな風に感想をもらすアンが今立っている路地は後ろに塀、他に道もなく一本道となっており、そこには衛兵。
さっきのように木箱があるわけでもなかった。
「しっかりつかまってろよー。あ、お前この袋の口押さえとけ」
子供は返事をする代わりにアンにぎゅっとつかまり、袋の口を握りしめた。
「…良い子だ」
衛兵は全勢力をあげて、突っ込んでくる。
アンは再び少し下がり、壁に向かって走り出す。
そして壁面を走り、塀を越え…再び塀の向こうへと消えた。
「さ、もうちんたらしてられねぇな」
子供と食糧を抱えながらアンは走り出した。
「くっそー逃がした‼」
塀を越えられ、またもやアンを逃がしてしまった衛兵の隊長は悔しがる。
「すげえ…あいつ、壁を走った…」
「感心してる場合か‼これであの金髪を何回逃がしたと思ってるんだ‼」
「は‼すみません‼」
感心していた衛兵を怒鳴りつけたが、彼もまた、アンの身軽さには一目置いていた。
「隊長、そろそろ交代の時間です」
「…仕方ない、女王陛下にも警備の報告をしなくてはいけないことだし…私は城へ向かう。他の者は交代要員が来たら帰ってきなさい」
そう言い残して隊長は城へと向かった。