カローレアの金

「お前いくつ?」

「五歳…」

「まだ平気だな…よし、行くか」

アンは食糧が入った紙袋を片手に持ち替え、ひょいっと子供を抱えあげた。

「え、どこ行くの?」

「んーうるさくて、騒がしいところ」

「あ‼いたぞ‼」

子供を抱えたアンの遥か先に衛兵がいた。

「早いなー」

そんな風に感想をもらすアンが今立っている路地は後ろに塀、他に道もなく一本道となっており、そこには衛兵。
さっきのように木箱があるわけでもなかった。


「しっかりつかまってろよー。あ、お前この袋の口押さえとけ」

子供は返事をする代わりにアンにぎゅっとつかまり、袋の口を握りしめた。


「…良い子だ」

衛兵は全勢力をあげて、突っ込んでくる。

アンは再び少し下がり、壁に向かって走り出す。

そして壁面を走り、塀を越え…再び塀の向こうへと消えた。


「さ、もうちんたらしてられねぇな」

子供と食糧を抱えながらアンは走り出した。


「くっそー逃がした‼」

塀を越えられ、またもやアンを逃がしてしまった衛兵の隊長は悔しがる。

「すげえ…あいつ、壁を走った…」

「感心してる場合か‼これであの金髪を何回逃がしたと思ってるんだ‼」

「は‼すみません‼」

感心していた衛兵を怒鳴りつけたが、彼もまた、アンの身軽さには一目置いていた。

「隊長、そろそろ交代の時間です」

「…仕方ない、女王陛下にも警備の報告をしなくてはいけないことだし…私は城へ向かう。他の者は交代要員が来たら帰ってきなさい」

そう言い残して隊長は城へと向かった。



< 3 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop