カローレアの金
「元々は王の妾が住む部屋です」

あまりの答えにアンは固まる。

「え…」

「ああ、気にしないでください。先代の王…私の夫は一人も妾を取りませんでしたから」

女王は嬉しそうにしている。


「あっそ」

アンはそんな女王を放って、ずかずかと部屋に入った。

「なあ、服とかはどうすんの」

「話を聞いてくれない人には答えません」

女王は膨れてそっぽを向いた。

「いや、話っていうかただののろけだろ」

「そうとも言います」

女王が廊下の方を向いていると、小さく声をあげた。

「どうかしたのか?」

「見つけました」

短く答えて女王が手を叩く。
すると女中が数名集まった。

「お呼びですか女王陛下」

「今日からこの部屋で暮らすことになったロイです。まだ不慣れなので世話を少しの間頼みます」

「かしこまりました」

「…以上です。仕事に戻っていいですよ」

女王は女中を解散させた。

部屋に入り、扉を閉める。

陽の光は、気づけばオレンジ色に変っていた。


「女中にあなたの服を買ってきてもらおうと思いましたが…それだとばれるということに気づきました」

「…不便だな」

「あとで買いに行きますか。二人で。お忍びで」

「……いいのか?」


< 39 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop