カローレアの金
カローレア城
アンがカローレア王国の兵に加わってから二日が経った。
「おいロイ‼さぼるな‼」
カインの声が響く。
今は兵の訓練中だった。
地面が広がり、何もない場所で訓練は行われていた。
もちろん陽を遮るものは無い。加えて訓練は厳しいもので、周りの者達は全員汗だくだった。
「さぼってない」
アンはそう短く答えて、額の汗をぬぐう。
日頃から衛兵と『鬼ごっこ』をしていたアンは体力に自信があったが、その自信も無くしてしまうほどの汗をかいていた。
ふと顔をあげると、二人の衛兵と目が合う。が、すぐに反らされてしまった。
「………」
どうやら、衛兵達はアンのことが気に食わないらしい。
それもそのはずだった。
カインが率いるカイン団は『出来る奴』が所属する団…いわば、エリート集団だった。
戦場では一番前に立ち、敵を次々となぎ倒す役目…らしい。
そんなエリート達の集合に、新人が、しかも身元の知れない奴が入ってきたのだ。気に食わないのは当然だろう。
しかも、その新人は城で生活し…
「ロイは意外と体力あるなー‼細いから軟弱かと思ってたぜ‼」
団長であるカインのお気に入り…になっていた。
カインがアンの頭をぐしゃぐしゃにする。
「おい、やめろ」
「冷たいなー」
ロイは笑いながらもやめない。
衛兵がこそこそ何かを話しているのが目に入った。