カローレアの金

「そうか」

アンは納得した後、二人の男達の前に立った。

「あの」

アンの声を聞いて二人の方がビクリとする。

「文句があるなら、正面から言ってくれません?こそこそ言われるの…好きじゃないんで」

「わ、わかった…」

そんなアンの様子を見ていた他の兵士達の中でも、変化が生まれていた。

それは、アンを認めたことと、こそこそ悪口は言わないぞ…‼という決心だった。


カインが次に対戦する兵士を指名する。

人垣に紛れたアンは空を見上げる。

「お前…すごいな」

そんなアンに話しかける声がした。
アンは少し驚きながらも、確実に自分に投げかけられた声の主を見る。

そこには赤い髪をした大柄な男がいた。

「二対一なのにあそこまで相手をこてんぱんにするのはすげえよ」

「…どうも」

アンは警戒心をとかず、軽く頭を下げる。

アンが警戒していることを感じたのか男が笑って名前を名乗る。

「ああ、俺はキルトだ。よろしく」

「…ロイ、です」

「ああ、別にいいよ、かしこまらなくて。堅いのは嫌いなんだ」

キルトと名乗った男は笑いながら手首を上下に振った。
その動作を見て、アンは心の中で市場にいるおばさんの姿を連想した。

正面では、カインに指名されたらしい兵士たちが戦っている。
今度は一対一だった。


< 52 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop