カローレアの金
「そうか」
アンは納得した後、二人の男達の前に立った。
「あの」
アンの声を聞いて二人の方がビクリとする。
「文句があるなら、正面から言ってくれません?こそこそ言われるの…好きじゃないんで」
「わ、わかった…」
そんなアンの様子を見ていた他の兵士達の中でも、変化が生まれていた。
それは、アンを認めたことと、こそこそ悪口は言わないぞ…‼という決心だった。
カインが次に対戦する兵士を指名する。
人垣に紛れたアンは空を見上げる。
「お前…すごいな」
そんなアンに話しかける声がした。
アンは少し驚きながらも、確実に自分に投げかけられた声の主を見る。
そこには赤い髪をした大柄な男がいた。
「二対一なのにあそこまで相手をこてんぱんにするのはすげえよ」
「…どうも」
アンは警戒心をとかず、軽く頭を下げる。
アンが警戒していることを感じたのか男が笑って名前を名乗る。
「ああ、俺はキルトだ。よろしく」
「…ロイ、です」
「ああ、別にいいよ、かしこまらなくて。堅いのは嫌いなんだ」
キルトと名乗った男は笑いながら手首を上下に振った。
その動作を見て、アンは心の中で市場にいるおばさんの姿を連想した。
正面では、カインに指名されたらしい兵士たちが戦っている。
今度は一対一だった。