カローレアの金
「そうだったんですか」

王子の口から出たのはそんなあっけらかんとしたものだった。

「え…それだけですか?」

「他に何か?あ、こういう場合盗賊のアジトでも聞いた方がいいんですかね…」

真面目に考え込むアレンの姿にアンは吹き出してしまった。

「わ、笑わないでくださいよ‼」

「す、すみません…でもおかしくて…普通の人なら…私に近づかないよう言ったり軽蔑したりしますから…」

「…それが普通だというのなら、僕は異端児でいいです」

アレンはきっぱりと言い放った。


「身分なんてくだらないと思っています。僕も、母も。僕は偶然この城に産まれただけですし、この国の一番最初の王だって最初は街の商人だったんです。

その血が僕にも流れている…それは、街の人々と僕は同じだということを表します」

「でも、王族と市民では…」

「何か違うところがあるとすれば、仕事の違いくらいじゃないですかね」


王子ははっきりと言いきった。

「でも盗人と王子では…」

「そんな気にすることですか?まあ確かに盗人なんて褒められた仕事ではないですけど、その人たちがいなければ衛兵は仕事がなくなりますし…

世の中持ちつ持たれつ、です。

だから…」

アレンはアンの目をまっすぐみつめた。

「『自分はここにいてはいけない人間だ』なんてこと、思わないでくださいね?」

「‼」

アンはアレンから目をそらした。

「…気づいてたんですか…」

「なんだか思いつめた顔をしていたので」

アレンはにこりと笑った。

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