カローレアの金
「『私たちの』ねぇ…」
「おいおい女王様よぉ、大概にしねぇと…」

身を乗り出してきた盗賊の一人を手で制止する。
ジャンの顔色は伺えない。しかし、長年ともに暮らしてきたアンには冷や汗が浮かんだ。

「くっ…くっくっ…くっくっくっくっくっ…はーはっはっはっはっはっ!」

突然ジャンが笑い出す。
盗賊の団員達もマズイという顔をし出した。

「おいおい女王陛下。そりゃあねぇだろ?俺たちが手塩にかけて育てた一人娘を………たった数日でてめぇのもんにしてんじゃねぇぞ」

ジャンの目にははっきりとした殺意が灯る。
女王が浮かべた笑顔はぎこちないものになっていた。

「アンは返してもらうぞ」
「では、どうしたら頂けますか?」
「そんな方法ねぇよ」
「こちらとしてもそれは困ります。そうですね…では、剣で片を付けましょうか」

ローズ女王の提案に衛兵達も団員達もざわつく。

「そりゃあ後腐れなくていいなぁ」
「それは良かったです。…あの子のお父様とあっては、さぞお強いのでしょうね。着替えて来ますから、少しお待ちください」

女王はそう告げ、一度城内に戻った。
それを皮切りに周りがどよめく。


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