カローレアの金
少し、ジャンの足が動いた。
それを見逃さなかったアンは、ジャンの速攻を防ぐ。

「へぇ…ま、これくらいは当たり前だよなぁ!」
「うっせぇぞクソ親父」

金属音が何度も何度も城に響く。
衛兵、団員、それに女王までもが二人の戦いぶりに息を呑んだ。

「これは…すごいですね」

いつの間にか女王の隣についていたカインが声を漏らす。

「すごいなんてものじゃありません。…こんなに優秀な方がいたなんて…」
「それに応えるロイも…。あいつのあんな動き、見たことありません」
「私もです」

女王は少し悲しそうに笑う。

「きっとあの子の本気は、あれか、あれよりもっと凄まじいものなのでしょう。それを引き出すには、相応の相手が必要ということですかね」
「でも女王、あなたはロイに勝たれたのでしょう?」
「結果はそうですが、そうなったのはあの子が舐めた態度をとっていたからです。私がこの国トップの腕前だと知らなかったから」

カインはここまで女王に言わせる、アンの腕前に熱いほどの視線を送った。

アンとジャンのやりあいは決着がつかない。
逆にどんどん激しくなっていく。

お互いの手の内を知っている分、一進一退の攻防戦だった。
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