カローレアの金
笑いながらアンは剣を前に構える。静かに、深く呼吸をした。

アンの纏う雰囲気が変わったことに気づいたジャンは、警戒態勢に入る。
二人はじりじりと歩みを進め、ついに剣が交わった。

「…ほう」
「悪いな親父……殺す気でいかせてもらう」
「へっ。何言ってやが…っ」

ジャンの言葉が終わる前に、アンの蹴りがジャンの脇腹にきまる。

「ちっ…さすがにほぼ毎日衛兵と追いかけっこしてだけはあるな…」

アンの脚力は女子のソレとは思えないものだった。

「それはどーも」

地面を強く蹴り、ジャンとの間を一気に詰める。
「!」
下からジャンの首をめがけて振り上げられた剣をジャンは咄嗟に剣で受けようとするが、スピードが乗った剣は予想以上に重く、軽快な金属音を出しながら剣は空高く舞った。
ジャンの後方数メートルの位置に剣が刺さった時、アンの剣はジャンの首寸前の位置にあった。

「…勝負、ありましたね」

女王のその一言で周囲の緊張が解ける。
衛兵達も盗賊たちも興奮していた。

「お頭にアンが…!?」
「おいおい初めての事じゃねーのか!?」

そんな周囲の喧騒とは他所に、二人の間には静寂があった。
< 76 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop