カローレアの金
「…まさか、お前に負ける日がくるとはな」
ジャンは呆れたように笑いながら、弾き飛ばされた剣を回収に向かう。

「…親父の動きが一瞬遅れたからだ。…なんで遅れた?いつもはそんなヘマしねえだろ…!」

アンのその言葉には答えず、剣を回収しアンの前に立った。

「俺ももう年ってことなんじゃねーのか?」
「よく言うよ、しょっちゅう女と遊んでる癖に」

笑いながらアンの頭に手を乗せ、雑に撫でた。

「…お前が居たいと思える場所が見つかって良かった」
「…っ」
「レベペはこのままこの国を出る。じゃあな」

アンの頭からジャンの手が離れ、ジャンはアンの横を通り過ぎて行く。
ジャンの指笛が短く響き、それを合図としてレベペ達は城から騒がしく出て行く。

「に、逃がすか…!」

この機会にレベペを捕らえようと試みる衛兵達が追うが、奴らはプロだ。
素早く城前に止めてあった荷馬車に乗り込み、発車させてしまった。

アンは呆然と立ち尽くしていた。

「…いいのですか」

そんなアンの前にローズ女王が立つ。

「聞こえてしまいました。この国を彼らは出てしまうと…。もしかしたらこれが、今生の別れかもしれませんよ」
そんな女王の言葉にアンの足は動き出す。
彼らを追って正門から出ようとすると

「アン!そちらではなくお忍びの時に使った門へ!」

慌てて方向を変え、庭へと向かった。
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