カローレアの金
「失礼。イヴァンの王族に対する忠誠心は私が良く知っています。先ほどの話を疑っているわけではなくて、何か心配事があるのよね?」

人が慌てる姿を見て楽しむとはなんつー女王だ、とカインはこっそりため息をつく。

「はっ。今朝のレベペの襲撃は、アンを巡って起きたものだと部下から聞きました。今後同じことが起きる可能性もゼロではありません。
更にあのアンという奴は王子に剣を教えているとか……。僭越ながら申し上げます。奴は女で、しかも盗賊出身です。王子に接することができる身分ではないかと」
「…彼女のことはサインス大臣も承諾済みです」

女王のその言葉にユーリが
「へえ、あのサインス大臣も!」
と目を丸くする。

「イヴァン、レベペはもう来ません。彼らは他国に移動しました」
「ですが、奴はレベペの後継者です。今の団長が死んだあと、アンを手に入れるために襲わないとは言い切れません」
「その時は、今回みたいなことにならないでしょう?」

女王が笑みを浮かべる。
その笑顔は冷たいものだった。イヴァンが少しひるむ。
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