カローレアの金
格技大会
「いいかお前ら…」
遠くでは格技大会の開催を祝う花火が上がっている。
ジャンとアン、そして盗賊の中でも活躍の多い者たちは、格技大会が行われるコロシアムの陰で円になっていた。さすがにレベペ盗賊が全員で来るとその人数の多さから目立ってしまうので今回はジャンが選んだ者だけだった。もちろん、ジルは留守番。
「アンが今から大会に参加して一暴れをする。その暴れ方は派手に…な。アンの戦いに見入っている観客から財布を取りだせ。でも全部は抜くな、わかったか?」
「おうよ」
全員が一斉に頷く。
「あと、上手く業者に化けろ。観客に飲み物を提供するんだ。そこでも稼ぐ」
提供する飲み物はさっきジャンが盗んできたものだった。
余程手際が良いのか、衛兵が追ってくることは無かった。いや、もしかしたら盗まれた人物がいまだに盗まれたということに気づいていないのかもしれない。
アンは少しばかり悔しさを覚えるのだった。
「アン、てめぇは戦いを盛り上げることに専念しろ。
一回負けそうになってから勝て。その方が観客は集中するからな」
「わかったよ」
アンは羽織っている布で頭を隠した。
金髪は目立つし、衛兵に勘づかれるかもしれないからだった。
「この格技大会は女王陛下も観覧するみたいだからな…衛兵の数も多い。てめぇら捕まるなよ」
「衛兵なんてひ弱な奴らに捕まってたまるかよ」
一人が言いだすと全員が、それもそうだ‼と賛同した。
「それにしても…今回ばかりはアンに胸が無くてよかったと思うぜ」
「ああ、確かにな。あったらばれちまう」
「…てめぇら、ウォーミングアップに付き合ってくれんのか?あ?」
アンはギロっと睨みつける。
「ひえーおっかねえ」
「さ、そろそろ行くぞ。アン、ばれないようにな」
「任せろ」
アンを残して、ジャン達はコロシアムに入って行った。