カローレアの金
「では私はこのあたりで。ごゆっくりご朝食をお召し上がりください」
サインスが頭を下げて食堂から出ようとすると
「あ、そうだ。一つ私からも伝えることが」
女王の声が響く。

「アンのこと、ばれました。全員に」
「……は?」
「ですから、ロイが女で、アンであるということが知れ渡りました。今回の騒動で」

女王の言葉にサインス大臣は軽くめまいを覚える。

「こ、こんなに早く…」
「まあいいじゃないですか。後ろめたいことがなくなりましたね」
「じゃあ母上、これからは堂々と彼女のことはアンと呼んでもだいじょうぶということですね?」
「そうなります」

楽しそうに話す2人を見てため息が出てしまう。

「そもそも…どうして広まったんでしょうか。いくらあのレベペが娘を取り返しにきたと豪語していてもそれがロイと結びついたのは数名であったでしょうに…」
「あ、それは私が発表しました。先ほど。衛兵たちの棟で全員の前で」
「……あ、あなたは!そういうことをする前には私に一言相談してくださいと!何度言えば!」
「相談したとして、私が言わなかったと思いますか?」

笑顔を浮かべる女王に何も言えないのは、サインス大臣が女王の性格を熟知していることを示す。

「……ごゆっくり朝食をどうぞ」
「はーい」

サインスはゆっくりと食堂から出て、ゆっくりと扉を閉めた。
女王の政治の手腕が優れているのが、なおさら憎たらしく思えてきながらサインスは廊下を進んでいった。
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