甘い誓いのくちづけを
身を乗り出すような勢いのさゆりに押されながらも、頭の中で必死に言葉を探す。


確かに、あの夜の記憶はほとんど無い。


だけど…


あの翌朝のあたしの服装はちっとも乱れていなかったし、理人さんが泊まった形跡も無かった。


それに…


「理人さんは、そんな事しないよ……」


何よりも、そう思わずにはいられなかった。


初対面だったし、相手は男性だけど。


あの状態なら、何をされても文句は言えなかったのだろうけど。


理人さんは、付け入るような事をする人には思えない。


だって…


出会った日の夜、深く傷付いたあたしに泣ける場所を与えてくれた理人さんの優しさを思えば、やっぱり彼の下心なんて微塵も感じられないから…。


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