甘い誓いのくちづけを
『俺ならきっと、君に似合う最高のリングを見付け出してあげられるよ』


密やかに、だけど甘さを孕んでいる事を隠さないような、意味深な言葉。


その台詞とともに、理人さんの声のトーンまでまざまざと思い出してしまって…


「……っ!」


夜風のお陰で火照(ホテ)りが和らいでいた頬が、急激に熱を帯びる。


「あっ、あんなの……深い意味なんてないに決まってるよ!」


自分自身に言い聞かせる事に必死で、思わず独り言を口にしていた。


静かな住宅街にそれが響いた事を気に留める余裕も無いくらい、心臓がドキドキと騒ぎ出す。


それをどうにかして落ち着かせようと、深呼吸を繰り返した。


程なくして、賑やかだった鼓動が少しずつ静まり始めた気がした。


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