甘い誓いのくちづけを
そういえば……


ふと頭の中を過ぎったのは、理人さんが教えてくれた彼自身の事。


理人さんって、確か宝石関係の仕事してるって……


「そっか……」


そこまで思い出した時、ハッとして思わず納得の声を漏らしていた。


きっと、“プロとして”って意味だったんだ……


理人さんの台詞に感じていた甘さが、ハラリハラリと剥がれていく。


チクリと痛む、胸の奥。


自然と漏れた大きなため息は落胆の意味を持ち、その痛みとともに現実を教えてくれる。


理人さんの言葉と、さゆりに色々と言われた事が相俟って…


自分自身でも気付かないうちに、心のどこかで彼との関係に甘いものが混じる事を期待してしまっていたのかもしれない。


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