甘い誓いのくちづけを
非常階段の一角で耳に当てた、スマートフォン。


そこから聞こえて来たのは、文字通り“大きなため息”だった。


「一体どういう事なの?瑠花」


さゆりとランチを済ませてフロアに戻る途中、掛かって来た電話。


叱られるのを覚悟で通話ボタンを押したあたしに、矢継ぎ早に本題が切り出された。


昨夜、さゆりと別れて心地好く帰宅した後、あたしは酔いの勢いに任せて母にメールを入れた。


内容はもちろん、文博との事…。


今朝それを読んだらしい母から、すぐに電話が掛かって来たけど…


寝坊をしてしまったせいで、1分も話せなかった。


「ちゃんと説明してちょうだい」


そして、夜に掛け直すと告げたあたしの電話を待てなかったのか、母が昼休みの時間帯を狙って掛けて来たのだ。


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