甘い誓いのくちづけを
重い気分になりながらも、再び携帯をしっかりと耳に当てる。


「……何?」


「ご飯はちゃんと食べなさいよ。お米はあるの?何なら、こっちから送ってあげようか?」


返って来たのは、優しい声音。


そんな声を聞けば、強引に電話を切る事は出来なくなる。


「大丈夫だよ、なくなったらちゃんと買うから」


「そう……」


どこか心配そうな返事をした母に、申し訳なさが込み上げて来る。


「お母さん、ごめんね……」


「何謝ってるのよ。お母さんに謝る事なんてないでしょ?今回はご縁がなかったのよ、きっと。それに、もしかしたらお父さんは喜ぶかもしれないわよ?瑠花がお嫁に行くの、すごく寂しがってたから」


おどけたような笑い声に、少しだけホッとした。


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