甘い誓いのくちづけを
静かな非常階段の踊り場に、安堵混じりのため息が響く。


まともな説明もしなかったあたしに、あんな風に言ってくれた母は本当に偉大だ。


文博の事をほんの少しでも考える度に憂鬱になっていたけど、お陰で何とか前を向けそうな気がして来たから…。


もちろん、本当に傷が癒えるにはまだまだ時間が掛かりそうだけど…


親心溢れる母の言葉と言い、あたしの為に本気で怒ってくれたさゆりの優しさと言い、あたしは本当に周りの人に恵まれていると思う。


それに、あの夜の自分(アタシ)を救ってくれた理人さんだって…。


何となく、流れで彼の事を思い出した時…


「ひゃっ……!」


マナーモードにしている携帯が震え出し、驚いて肩が跳ね上がってしまった。


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