甘い誓いのくちづけを
「…………え?」


たっぷりの沈黙の後、漏らしたのは驚き混じりの声。


「瑠花ちゃんが俺の事を考えてくれていた事が、嬉しかったんだ」


予想外の言葉に思考が上手く働かないけど、理人さんの声は綺麗に耳に届く。


「あぁ……でももしかしたら、“いい意味で考えてた”って訳じゃないのかな?」


おどけたように、だけどどこか真剣さを帯びた声音が耳に届いた直後、咄嗟に首を横に振っていた。


理人さんにとっての“いい意味”と“悪い意味”は、よくわからない。


だけど…


「出会った日の事を……あの日、理人さんに心を救って貰った事を思い出していたんです。だから、あたしにとってはいい意味で考えてました」


少なくとも、理人さんの事を悪い意味で考えたりはしない。


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