甘い誓いのくちづけを
どこか甘いものを孕んでいる気がするその誘いに、あたしの単純過ぎる胸がときめかない訳が無い。


文博に婚約を破棄されてから、まだ幾日も経っていないのに…


ついその誘いの中にあるかもしれない甘さを想像した自分(アタシ)に、呆れ混じりのため息が漏れてしまいそうになった。


だけど…


断る理由なんて、どこにも無くて。


そもそも、理人さんとはまた会う約束をしていて。


しかも素直に薄情してしまえば、あたしは今すぐにでも首を縦に振る準備が出来ていたりもする。


頭の中でそんな言い訳にもならない事を並べた後で、受話口を手で押さえて小さく深呼吸をした。


それから程なくして、自然と漏れていた笑みを浮かべたままゆっくりと口を開いた。


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