甘い誓いのくちづけを
何度も頭を下げてから自分のデスクに戻ると、さゆりが声を掛けて来た。


「災難だったわね」


「……うん」


ため息混じりに頷けば、さゆりは眉を寄せて苦笑を零した。


「ほんの数秒遅刻しただけなのにね、全く……。課長って、よっぽど瑠花がお気に入りなのかな?」


「ちょっと、さゆり!変な事言わないでよ!そんな訳ないじゃない!」


声を潜めながら必死に首を横に振ると、さゆりがケラケラと笑った。


「冗談よ。それより、お母さんとの電話長かったわね。文博さんとの事、報告したんでしょ?どうだった?」


「ま、まぁ……」


曖昧に答えながら視線を逸らすと、さゆりが口元をニヤリと緩めた。


「ふ〜ん。さっきの電話の相手、実はお母さんじゃなかったんだ?」


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