甘い誓いのくちづけを
それからはずっと、理人さんの事が頭から離れなかった。


少し前までは、夜一人でいると嫌でも文博の事ばかり思い出していたのに…


今はもう、そんな事を考える余裕は微塵も無い。


柔らかい笑顔や、優しい声音。


力強い胸元と、大きな手。


運転中の横顔に、綺麗な立ち居振る舞い。


思い出すと言うよりも、頭の中に鮮明に残ったままの理人さんの姿が次々と流れていく。


同時にその僅かな合間を埋めるように脳裏を過ぎるのは、自分の事になるとはぐらかそうとする彼の態度。


これから先はきっと、動き始めた自分の心に気付かない振りなんて出来なくなる。


だけど…


理人さんにはまだあまりにも謎が多過ぎて、彼に惹かれていく事が少しだけ恐かった――…。


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